日本摂食支援協会 顧問 元厚生大臣 藤本孝雄 挨拶
2025年に全ての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。それに伴い、年金・医療費・介護費の急増がおき、持続可能な日本の社会保障制度の根幹を揺るがしかねない状況になります。
世界のどの国も経験したことのない超高齢社会に突入する日本の動向を遅れて超少子高齢化社会を迎える国々は日本がどのような対策を講じるのかを注視しています。
このような状況に、厚生労働省は「地域包括ケアシステム」を2025年より開始します。圧倒的に不足する介護用のベッドを補うために、高齢者が住んでいる地域全体で医療介護にかかわるすべての職種で高齢者を在宅で見守るというシステムです。地域包括ケアの成功が次の世代に対しての現役世代の責任であるとさえ言えます。
さて、医療費の急激な増加を抑制するためには、まず、健康寿命の延伸、そして日本国全体の生産性を上げる必要があります。
健康寿命の延伸に欠かせないのが年齢と共に衰えるフレイルの防止です。そのために日本各地に「通いの場」が設置され、地域ぐるみで介護・フレイル予防を一体的に行う活動が始まっています。そして全身のフレイルを予防するためにまず行わないといけないのが口腔フレイルの予防や摂食嚥下指導です。歯科医師の活躍が期待される分野となります。
次に介護現場での生産性を上げるという取り組みにおいては今後介護ロボットの導入が急速に進むのではないかと推測されます。
地域包括ケアの成功において、歯科医療職の果たすべき役割は非常に重要なものとなっています。ところが、口腔フレイル予防の指導や摂食嚥下指導を行える歯科医師が非常に少ないということが、大きな問題として取り上げられるようになってきました。日本摂食支援協会における調査でも様々な原因が浮かび上がってきました。その中で特に問題と思われたのが、施設等に赴き利用者様の協力を得て実地研修を行う場がほとんどないということでした。これは自動車を運転するのに教科書の勉強だけで、実車を運転することなく、いきなり高速道路を一人で運転するようなものです。
このような問題を解決するために昨年の12月に日本摂食支援協会は一般社団法人として設立され、本年1月より、特別養護老人ホームにおいて、施設・利用者様の協力を得て実地訓練を実施し、口腔フレイル予防・摂食嚥下指導ができる歯科医師を輩出してます。
口腔は健康の源です、口腔の健康を維持することがこれからの超少子高齢社会には必須です。
日本摂食支援協会では、ただ治療をするだけの歯科医院ではなく、生涯にわたり口腔の健康を支えることができ、さらに摂食嚥下指導ができる歯科医院を今後も増加させていきます。